国公立大学、そして私立大学への進学率
大卒の就職率も低くなっていますが、高卒のそれはもっと嘆かわしく、それを反映するかのように大学進学率が高まっています。文科省の発表によると2019年度に大学に入学した数は約63万1000人となっています。高校卒業人数が約105万人ですから、大学進学率は60%、つまり二人に一人以上が大学生というわけです。
大学入学者の内訳は国公立大学が約13万人、残りの約50万人あまりが私立大学生ということになります。大学数は国公立が179、私立が607、合わせて780大学となっています。そこに63万人強の学生を定員通り満遍なくきれいに振り分ければ、全員が大学に入学できることになります。
しかし、それは計算上の話で、現実的にはそれぞれに志望校がありますから、志望者が集中する、いわゆる人気大学は競争率が高くなり、あえなく浪人というのもある一方で、定員割れに喘ぐ大学もあります。
いずれにしろ、大学が増え、全入時代といわれても、だれもが行きたいと思うような大学は狭き門であることに変わりはありません。とりわけ国立大学は総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試を取り入れているとはいうものの、入学する学生の80%が一般入試を経てという相変わらずの学力主義ですから、昔ほどではなくとも難関であることに違いはなく、国立大学はまだまだ高根の花といえます。
そういった意味で私立大学は人気校でも希望を持たせてくれます。なにしろ平均とはいえ入学者の半数以上は推薦入学というのですから、がぜんチャンスが広がります。たしかに推薦でも人気大学は競争率が高くなりますが、そんな大学は全体の10%に過ぎないのです。残りの90%の大学の中にも有名校、伝統校がありますし、たとえ保護者にとっては「そんな大学名、聞いたこともない」、「どこにある大学だ」というような大学ででも、時代にニーズをしっかりとらえた教育を実践している大学はたくさん存在します。
たとえば、秋田県にある秋田国際教養大学は開校後、瞬く間に全国から学生が集まる人気大学となり、東大、京大と匹敵する就職率で話題となっています。たしかに公立という強みはありますが、地方では国立といえども定員割れが危惧される時代です。やはり勝因は来るべき時代を見据えた教育内容ということに他なりません。
今は名も知れぬ大学でも3年後、5年後、10年後に堂々とした人気校になっている可能性は十分あるのです。実際、無名大学でも教育内容の充実と就職向上に懸命に取り組み、実績を上げている大学は少なくありません。ですから、志望校を検討するときには大学の教育内容をしっかり確認し、将来性を探ってほしいものです。
大学共通入学テストが人気なわけ
旧大学入試センター試験に代わり2021年度から実施された大学共通入学テストは国公立大学受験必須試験であることに違いはありません。特徴としてはこれまでのセンター試験に比べて、問題文自体を理解することが難しいなど、暗記や知識だけで解ける問題が減るなど、理解力や考察力が求められるようになっています。
従来通り大学共通入学テストも国公立大学だけでなく私立大学入試としても受験できます。
令和4年度の大学共通入学テストは、令和4年1月15日(土)、16日(日)、追・再試験実施期日 令和4年1月29日(土)、30日(日)、それぞれ2日間にわたって実施されます。
受験費用は3教科以上が1万8000円、2教科で1万2000円となっており、試験会場も全国至る所で実施されるので交通費負担が少なく済みます。
ただし、受験生側から受験会場を指定することはできません。あくまでも大学入試センターが受験者数と住所、受験会場の環境を鑑みて決定しています。また、実施日が雪模様の悪天候というケースが多く、交通トラブル、体調管理が難しい受験生泣かせの試験といわれています。
受験科目は、国公立は5教科、ないし6教科7科目を受験しなければなりません。一方の私立大学では、それぞれの大学で受験科目を指定しており、文系が英社国、理系が英数理3教科で、いずれも解答方法は選択方式で正解と思われる数字にマークをするというマークシート式です。英語ではリスニング試験も実施されています。
国立大学受験の場合、まず大学共通入学テストを受けて、その成績に従って大学を選び願書を出すという順になっています。
試験結果はすぐにわかりませんから、受験生自身で自己採点するしかありません。多くの受験生は解答用紙などに自分の答えを記しておき、試験翌日の新聞等に掲載される正解と配点をチェックして、自分の点数を割り出すという方法をとっています。
受験生は自己採点を基に志望大学に願書を出しますが、自己採点に大きなミスがあると、点数の及ばない大学に出願してしまうことになります。
その大学の出願数が少なければ二次試験にこぎつけるのですが、出願数が一定数以上に達すると最低合格ラインの点数を決めて、それ以下は二次試験を受験させない、いわゆる「足切り」が行われます。
国公立大学では、二次試験といわれる個別学力検査が実施されます。これは、学部や学科の定員を前期と後期、また中期に分けて募集するというものです。つまり、受験の機会が2回、もしくは3回あるということになります。
いずれにしても大学共通入学テスト後、志望大学に出願し、第二次試験に挑むことになります。もちろん、大学共通入学テストの成績が悪ければ、その時点で不合格となります。
センター試験と二次試験の総合点で合否は判定されますが、どちらの試験に重きが置かれるかは、大学によって異なります。その点もしっかりとチェックしておく必要があります。
なにかとハードルが高い国公立大学ではありますが、あまり成績が伸びないからといって簡単にあきらめる必要はありません。実は、お堅いはずの国立大学でも最近になって、私立大学で人気の総合型選抜入試や推薦入試を積極的に実施するようになってきています。
とりわけ、総合型選抜入試は人物主体の入試制度ですので、高校時代に生徒会長や部活、校外活動で人一倍活躍してきたことが高く評価されます。過去にどんな人物が、どんな活動が評価され合格したのか、高校OBのネットワークを利用したり、あるいはオープンキャンパスなどで事前にリサーチしておきたいところです。
さまざまな入試制度を活用して、合格チャンスを増やそう
私立大学の場合、大学共通入学テストで受験すれば数多くの大学に出願できるというメリットがあり、人気も上々です。なにしろお金にいとめをつけなければ、何校でも出願できてしまうのですから利用しない手はありません。
ただし、私立大学を大学共通入学テストで受験する場合は、受験前に受験する大学に願書を出しておかなければなりません。費用はセンター試験が3教科以上で1万8000円、2教科以下で1万2000円に加え、各大学の受験料が必要になります。
ほとんどの私立大学では、5教科の中から3教科選択としています。そこで5教科を受験すれば、数多くの私立大学の受験科目を網羅できることになりますから、受験大学の選択肢が広がることになります。ここで裏技があります。
たとえば、社会で歴史と地理、政治経済を受けておれば、一番高い得点の教科で考査されるのです。つまり、一つの教科で失敗したとしても、他の教科でカバーできるということです。また、高得点の3教科を自動的に選別して考査してくれる大学もあるので合格率がグッと高くなります。
私立大学で実施される一般入試は、その多くが文系なら英社国、理系なら英数理の3教科受験となっています。一般的に一つの大学で学部や学科を変えて受験する学内併願もできるようになっています。
私立大学の中には、一人でも多くの受験生を入学させるための入試方法を実施しているところもあり、そのどれもが受験生にとっては、有利に働くようになっています。
たとえば、連続した数日のうち任意の1回、あるいは2回以上が受験可能な「試験日自由選択制」を実施する大学もあります。また、複数回受験できる制度を持つ大学の一部では、1回の受験料で何回でも受験可能としたり、2回目の受験料を減額するなどとしている大学もあります。
さらに、3教科のうち、2教科で判定、もしくはベスト2教科で合否を判定するという大学もあれば、受験生に自己申告させた得意教科の得点を、その大学、学部が取り決めた点数配分で採点する「傾斜配点」を実施している大学もあります。
たとえば、国語を得意と指定して70点を取ればそれが割り増しで、極端なケースでは2倍の140点になるという具合です。受験する大学の入試制度を吟味して、一番得意とする方法で受験できる大学を探すのも受験テクニックといえます。
あこがれの大学なら、学部はこだわらないという受験生も少なくありません。大学もそんな受験生が多いことは先刻承知で、複数学部受験できるように何日も日程をとっています。そんな受験生は受験するすべての学部に願書を出し、それぞれの学部試験日に受験しなければなりませんでした。
試験問題の内容も学部ごとで異なりますから、出来・不出来があり、中には出来のいい方の試験問題であれば合格できた学部があったと悔やむ受験生も少なくありません。そうした受験生のストレスを一気に解決してくれる入試制度が全学部統一試験と呼ばれるものです。
この方式は、私立の総合大学で導入されているケースが多く、同一の試験問題で全学部受験できるのが大きな特徴です。この試験を一回受験すれば、その大学の複数の学部で合否判定がなされます。合格の確率が上がるだけでなく、地方から上京する受験生にとっては旅費の節約になりますし、体力的にも負担が少なくて済みます。
また、従来の一般入試とも併願もできますので、絶対にこの大学と決めている受験生には見逃せない入試制度です。ただし、併願した学部の数だけの受験料が必要となるので、その数が多くなると受験料がかさむのを覚悟しなければなりません。さらに、文系と理系とでは試験日が異なっている場合もありますので、こちらも事前のチェックが必要です。
少子化に伴い大学では生き残りをかけ、受験生獲得に知恵を絞っています。これからの社会の動向を見越した新学部の立ち上げや、それに伴う有能な教授陣の獲得、大学施設の充実、そして、就職支援に力を注いでいます。
そして、何よりも社会に貢献できる人物の輩出も大学に課せられているといえます。そのために画一的な学生だけでなく、個性豊かな学生を獲得するための入試制度を編み出し、また、その内容は日々進化しています。そうした状況である限り、じっくりと探せば、受験生にとってより得意な形の受験方法は必ずあるはずです。