大学発表の数字を参考にした大学の選び方

大学の情報公開は正確なものか?

 高度情報化時代といわれ官庁も企業も公に情報を公開するのが当たり前になりました。そんな時代で、大学の多くが、公開するには定員割れなど不都合な情報があることからか、驚くほどに秘密主義を貫いてきました。もちろん、それがいつまでも許されるはずがありません。文部科学省は、重い腰を上げ定員割れなど不都合な情報を包み隠さず公開し、教育の質を向上するよう大学に情報公開を義務付けました。

公開される情報は、教員数及び授業科目、一年間の授業計画、入学者数や定員、在学者数、卒業者数とその進路などの9項目に加え、義務ではないものの「教員1人あたりの学生数」、「外国人教員数」、「留学生へのサポート体制」など、公開が望ましい情報も開示するよう求められています。こうした情報は、情報自体の価値だけでなく、情報を開示しているかどうかという点で、その大学の姿勢や誠意も見えてきます。

大学の中には形だけの情報公開に留め、受験生や保護者にとって、とても大事な情報を隠していたりすることもあります。それを見抜くには、どの数字に注目し、それをどのように読み解くかということを自ら行うしかありません。

把握しておきたい基本数字

  大学が発表している数字のなかでまず注目したいのが「在学者数」と「定員」です。定員から在学者数を引けば定員割れの実態を把握できますし、在学者数は、大学の評価の一つの指針になります。

その他に注目したいのは、就職率と進学率、そして中退率です。こういった情報は新聞社などが発行する受験参考本などに掲載されていますから、それらを参考にするといいでしょう。

こうした数字を分析するときは、入学した人数を100人として考えると分かりやすくなります。たとえば、中退率が20%、就職率が60%、進学率が5%であれば、100人のうち中退するのは20人。残りの80人のうち、就職するのは48人で、進学するのは4人。そして、就職も進学もしない学生が28人いるということがすぐにわかります。この場合、中退と合わせると、48人が就職も進学もしない学生ということになり、就職した者と同数ということになります。
ただし、大学の就職率は、アルバイトや派遣社員、契約社員を含めてもいいことになっていますから、正社員という意味では、もっと差し引いて考える必要があります。

また、1人の教員が何名の学生を見ているかも重要になります。1対20と1対60では教育の質に大きな開きがあります。学生の数が増えれば増えるほど、当然、教室も広くなり、教員と学生の距離は遠くなります。小さな教室であれば、質問もしやすいですし、教員が学生の顔を覚える可能性も高くなり、意見交換もしやすくなります。

一方、大教室では、講義を聞くだけになり、意見交換は難しくなりますし、教室はうるさくて教員の声が聞こえないということもよくあります。大学案内を見ると、まるで判を押したかのようにきめ細かい指導を掲げる大学は多いですが、数字を見れば、それがどこまでのものか見極められるのです。

大学発表の就職率とは?

文科省と厚労省共同の調査によると、2021年4月の大学卒業者の就職率は96%でした。単純に数字だけを見れば9割の学生が就職できたように見えますが、この数字は実態を反映していないと批判する声もあります。
実は、あるからくりが隠されているのです。そもそも、この数字は、文部科学省と厚生労働省が毎年、10月1日から2ヶ月おきに実施している調査によるものです。
この数字の母数は大学の卒業生ではなく、流動的な就職希望者の数に過ぎません。しかも、就職活動や資格試験などがうまくいかず、いわゆる就職留年を選択する学生もその範疇からは外れますし、徐々に就職活動を終える学生も出てきますので、母数は減っていき、就職内定率はどんどん上がっていくという仕組みになっているのです。

この就職率のデータ以外に文部科学省がまとめた「学校基本調査」というのがあります。こちらはすべての卒業生を母数とした集計です。当たり前ですが、この2つのデータには開きがあります。同じ就職率という言葉を使っているのにもかかわらず、まったく異なる数値が発表されているのは不思議を通り越し悪意さえ感じてしまいます。

実は、この2つの調査と同じように、大学が発表する就職率の算出方法には決まったルールがありません。そのため、各大学はそれぞれに好きに分母と分子を設定して、就職率を出しています。つまり、受験生も保護者も単純に比較して判断できないということです。したがって、そこにある数字はあくまでも参考程度と考えるしかありません。

いずれにしろ、就職率が99%になっても残りの1%に入ってしまったのでは元も子もありません。逆に、就職率が1%でもそこに入っていれば問題はないということになります。つまり、大学でしっかり学び、企業の欲する人材になっていればいいのです。

ネット時代の口コミ情報も参考に

  オープンキャンパスは、大学を知る絶好の機会になりますが、そこで説明される数字やカリキュラム、実績は、いわば大学の外に向けた姿、つまりいい所だけを繕ったものですから差し引いて見てください。
では、数字に表われない、いわば非公式な大学の情報を知るためにはどうすればいいのでしょうか。そこで役立つのがTwitterやfacebook、Instagram、Lineといった情報ツールのSNSです。

志望する大学に関連する人々のつぶやきや在校生のSNSで見ると、授業の感想やサークル活動など、外からは見えにくい情報がたくさん飛び交っています。大学の教授がSNSに登場していることもあります。愚痴ばかりをつぶやいている教授もいれば、学生と活発に交流している先生もいるでしょう。

しばらくの間、同じ大学の学生や教授の動きをチェックしていると、その大学の真の姿が見えてきたりするものです。もし、なかったとしても、学生に直接つぶやいてみてください。学生は気取ることなく、良いことも悪いこともあるがままに答えてくれますから、お望みの情報がすぐさま寄せられるものです。

タイトルとURLをコピーしました