高校生の2人に1人が大学に進学している
まず、自分の周りを見てみてください。大卒者は珍しいですか? 中には、あの人も大学出ているんだってということもあるのではないでしょうか。少子化がいわれる中、大学進学率は右肩上がりで、高校生の2人に1人が進学する時代に突入しています。
ちなみに、日本全国には788校もの大学が点在し、2020年度現在、300万人弱の若者がいずれかの大学に在籍しています。この大学進学率の上昇傾向は、今後いっそう拍車がかかると予測されており、令和10年には大卒は当たり前の学歴で、高卒は中卒くらいの感覚になるのではないかとみられています。
いうまでもなく、そんな社会になると高卒の就職はますます不利になるでしょうし、婚活で苦労を強いられる可能性もあります。それを考えると、大学進学を今一度、真剣に検討する必要があるのではないでしょうか。
大学進学率が高まっている理由――その① 少子化で子どもへの投資が増えている
テレビや新聞で深刻な少子化が報じられているように、子どもの数が激減しています。このままでは、日本という国の存続が危ぶまれるほどともいわれています。そんな社会で求められるのが海外の労働力です。とりわけ、単純作業は海外の労働力に支配されることになり、日本人の若者はいわゆるホワイトカラー系の職場に集中することになります。当然、仕事のパイは少なくなりますので、就活はいっそう厳しいものとなり、学歴が今以上に大事になることはいうまでもないでしょう。
少子化の影響はそれだけではありません。子どもが少ない分、1人にかけられるお金が大きくなっていることがあげられます。それは祖父母世代までに及び、孫に多大な投資をすることを喜びとしている高齢者が少なくありません。
進学率の高まりは、商業高校、工業高校、農業高校、水産高校といった高校からの進学者が増えているのも大きな要因です。実際、大学での学びは専門性を高めていくことになりますから、実践力を養われてきた高校生を大歓迎という大学も増えてきています。
大学進学率が高まっている理由――その② 地方の国立大の壁はどんどん低くなっている
さらに、大学進学率を押し上げる社会背景があります。それは大学の経営的な問題です。国立大学はこれまで経営努力しなくとも国から運営費用が当たり前のように支給され、地域の知性の頂点として存在してきました。そこで経営力は求められませんから、いわゆる顧客となる地元の高校生たちが都会へと流出してもどこ吹く風。若者が興味を持つ研究など考えもせず、長年引き継いできたようなカビ臭い研究を続けてきた結果、地元高校生にそっぽを向かれ、その結果、定員割れ。それでも痛くも痒くもなかったのです。
ところが、独立行政法人化し、それぞれの大学が自前で運営資金を調達することが求められるようになると、定員割れなどもってのほか、学問の充実化を図るために募集領域を広げざるを得なくなったのです。
しかし、いきなり経営を押し付けられてもうまくいくはずもありません。いくつかの国立大学が合併するなど試行錯誤していますが、そもそも地域の高校生から見放されている状態から脱皮するには、入りやすい大学にならざるを得ないのが現状です。
大学進学率が高まっている理由――その③ 全国に590校もある私立大学
一方の私立大学は、全国に590校前後が点在し、大学を選ばなければ、受験生の全員がどこかの大学に入れるとまでいわれるほどにふくれあがっています。当然、受験生はどこの大学でもいいというわけではないので、各大学はなんとか選ばれる大学になろうと若者が興味を持ちそうな学部の設置や、立地を始めとした施設の整備に力を入れ、さらにマスコミや予備校を巻き込んでブランド化に躍起になっています。
確かに、大学のブランド化は今に始まったことではありません。有能なスポーツ選手を入学試験度返しで獲得して広告塔に仕上げるのは皆さんご存じの通り。箱根駅伝なんかはその象徴ともいえるイベントといっていいでしょう。同大会に出場を果たし、多くの高校生が志望するようになり、ほとんどの大学の偏差値がグッと上がっています。
しかし、スカウト合戦には費用がかさみますし、有力選手獲得で戦力を増大しても、どの大学も同じことをしているのですから、まさに横並び状態。箱根駅伝で優勝争いが熾烈になるのは、横並び現象を如実に表しているといっていいでしょう。
かくなる上は、他の魅力を打ち出していかなければなりません。そこで各大学がこぞって導入したのが、学力ではなく、人物本意で合否を決める「総合型選抜試験」です。
大学進学率が高まっている理由――その④ 筆記試験が苦手な高校生の救世主「総合型選抜試験」
総合型選抜試験とは、これまでAO試験といわれていた入学試験で、筆記試験でなく、高校までどんなことに力を入れてきたか、あるいは興味を持ち、成長してきたかで合否を決めるというもので、私立大学の8割以上が実施しています。
この総合型選抜試験は筆記試験に比べて入りやすいといわれ、うまくするとツーランクアップの大学も視野に入れられると人気になっています。実際、多くの予備校が総合型選抜試験での受験生に向けた講座を設けています。
未来への投資は莫大だが、 「大卒」はこれから必須のライセンスと考えよう
コロナ騒動に見舞われた2021年度は63万人が受験。この数は前年からの3万人減で、22年度もコロナ禍での入試だったために、さらに減少傾向にあるものの、通常通りになれば受験生は概ね70万人前後に回復するのではと見積もられています。つまり、高校生の半数以上が大学に進むという傾向は年々高まっていくとみていいでしょう。
中には、ウチは経済的にとても大学進学など考えられないというご家庭もあるでしょう。むしろ、支出を考えるとほとんどのご家庭が「無理」と答えを出すくらい大学に行くにはお金がかかります。それでも、「大卒」の肩書は、格差社会の中で戦っていくための最低限のライセンスとも考えられるのです。少子化著しいこれからの時代、子どもの将来を考え、家計をやりくり、あるいは祖父母の援助、奨学金なども視野に入れて、大学進学を考える、そんな時代になったといえるでしょう。