入学者の半数以上が総合型選抜入試(旧AO)や推薦入試で入学

暗記型勉強が苦手でも大学には入れる

大学に進学したいものの、記憶力だけがものをいう受験勉強は苦手とあきらめた人は少なくありません。また、体育会系の部活動に青春のエネルギーを注ぎ、とても受験勉強までは手がまわらなかったという人もいるでしょう。しかし、大学の考え方はずいぶん柔軟になっていますから、学力は多少劣ろうとも、向上心旺盛な学生なら入学させようと推薦や総合型選抜入試に積極的に取り組んでいます。

確かに、推薦入試はずいぶん昔から行われてきました。これは学校の成績や部活動で好成績を残した人を学校が大学に推薦するというものでした。いわば学校のお墨付きの高校生なのですから、それなりに優秀な人物なのでしょうが、受験という過酷な競争の場に身を置かなかった要領のいい一群とみなされ、かつては一般入試をくぐりぬけてきた学生の白い目にさらされていました。

しかし、今では推薦で大学に入学というのが半数を上回るといいますから、かつてのような偏見はなくなっています。中には90%以上が推薦入学といった大学もあるほどです。

実はすっかりおなじみとなった総合型選抜入試も人気の推薦入試の一つとなっています。総合型選抜入試は、大学側が求める「学生像」にあてはまる受験生を受け入れる入試制度です。いわゆる試験の成績よりも人物を重視して合否を決定する試験となっています。

この入試制度は私立大学から始まり、今では国公立大学でも幅広く実施されています。概ね高校時代に生徒会長や部活動で部長を務めていた生徒、あるいは、課外活動でそれなりの経験や実績を残した生徒を対象とした入試です。筆記試験を一部課すケースもありますが基本的には筆記試験はなく、一次試験では面接、それを通過するとレポート提出や自己をアピールのプレゼンテーションなどが課せられます。生徒会や部活動に高校生活をかけた生徒にとっては救世主的な入試制度といえるでしょう。

総合型選抜入試は、学校推薦で必要になる内申書といった高校の成績も問われません。受験生にとってこれ以上にない好条件が並ぶことから一般入試では学生が集まらない無名私立大学が実施するものとイメージしているならば、それは大きな勘違いです。多くの有名私立大学でも取り入れています。

つまり、総合型選抜入試はこれまで大学をめざせなかった高校生の進学を可能にし、また一般入試の実力よりワンランク、ツーランク上の大学をめざせるようになったのです。受験勉強が苦手ならば、生徒会や部活動に高校生活をかけてみるというのもある時代だということです。

また、この総合型選抜入試は併願ができますので、自分のやってきたことを求める大学なら複数大学受験可能ですのでワンランクアップ、さらにツーランクアップの大学合格も決して夢ではなくなる可能性があるといえます。

 

人気のAO入試 「楽に入れそう」ではいけません

注意しなければならないのが、入学チャンスが安易に転がり込んでくるからでしょうか、入試課題が自分に合っているかばかりに目がいって大学学部を問わないという姿勢です。入学する学部では何を学ぶのか、そして将来、どういう仕事に就けるのかなどをしっかり調べ、自分の将来像に照らし合わせておく必要があります。そこに落差があると授業が面白くないということになります。もともと学力不足は否めませんからモチベーションの低下は致命的で、落第、中退、退学という負のスパイラルに翻弄されることになりかねません。

とはいえ、大学の実態や学部も変貌を遂げ、聞きなれない大学や学部名が百花繚乱状態。昔の大学しか知らない保護者にとっては、今の大学がどうなっているのか想像もつかないというのが本音でしょう。ましてや、高校生にとっては、大学に入ったらどのような講義があり、どんな資格が取得でき、将来はどういった職種の会社に就職できるのかイメージできなくて当たり前でしょう。

オープンキャンパスは入学試験情報の宝庫

 そこで役立つのがオープンキャンパスです。夏休みや日曜日などの休日に大学が学校を開放しての学校説明会をするというものです。総合選抜型や推薦で受験する人だけでなく、受験生なら絶対に見逃せないイベントですし、保護者にとっても重要な情報が取得できる絶好のチャンスとなります。

オープンキャンパスでは大学の歴史、設備、各学部の社会的評価、就職状況をはじめ各学部の内容や入試についても詳しく説明してくれます。また、在校生が学部やキャンパスライフなどについて学生目線で紹介してくれる大学もあり、同世代の受験生にとってライブ感一杯のアドバイスが得られますし、保護者にとってもわが子のキャンパスライフが想像できると好評です。

とりわけ見逃せないのが入試案内パンフレットでは紹介されていない情報の公開です。たとえば総合選抜型入試では大学側はどんな学生が欲しいと考えているのかといった「学生像」や、入試で課せられる課題、レポートの書き方、そして選考基準などをこと細かく教えてくれる大学もあります。

オープンキャンパスに行くことで学校の立地環境や交通機関などもある程度知ることができますから地方から上京する受験生や家族にとっては、入学後のプランを立てるためのいい材料ともなります。

そういった意味で、オープンキャンパスはまさに情報の宝庫。できるだけ多くの大学を見てみたいものですが、交通費や宿泊費などを考えると効率のいい周り方を研究しなければなりません。各大学でオープンキャンパスのスケジュールを発表していますので、それをもとにスケジューリングしてみてください。

総合型入試の合格者の学力を入学後ケア

総合選抜型入試の最大の欠点は、受験勉強はおろか、高校卒業レベルの学力を持たない学生も大学に入学してしまうことです。大学の講義内容が理解できないという学生もいます。その結果、単位がとれずに進級や卒業ができずに中退するというケースが跡を絶たず、各大学でも大きな問題としてその対策に乗り出しています。

幸い総合選抜型入試は早いところでは夏休みには合否が決定します。それから入学までの半年を高校の復習時間とすれば、大学で学ぶだけの学力は得られるはずです。最近では、総合選抜型入試で合格した学生に高校での勉強を復習する教材を送り、その提出をノルマとしたり、大学の講義についていくための知識を身につけるための特別講義を設ける大学もあるといいます。これをまじめにこなすことで学力問題はほとんど解決するといわれています。

大学での勉強はいい点数を取るだけのものではありません。自分の頭で考え、理解し、そして自分の考えとしてまとめていくという思考法を身につけられるというのも大学ならではのことでしょう。ある意味では総合選抜型入学者は、そうした思考回路が高校生活で培われているという見方を大学側が判断しているから総合選抜型入試が定着し、拡大しているのです。そうした力が発揮できるということを信じて、挑戦してみる価値のある入試制度なのではないでしょうか。

 

 

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