大学全入時代といわれるほど、大学は入学しやすくなったのか? その②

入学者の半数以上が総合型選抜や学校推薦型選抜で入学

大学に進学したいものの、記憶力だけがものをいう受験勉強は苦手とあきらめた人は少なくありません。また、体育会系の部活動に青春のエネルギーを注ぎ、とても受験勉強までは手がまわらなかったという人もいるでしょう。しかし、大学の考え方はずいぶん柔軟になっていますから、学力は多少劣ろうとも、向上心旺盛な学生なら入学させようと学校推薦型や総合型選抜入試に積極的に取り組んでいます。

確かに、学校推薦型入試はずいぶん昔から行われてきました。この学校推薦型には公募制(旧公募推薦)と指定校制度(旧指定校推薦)があり、学校の成績や部活動で好成績を残した人を学校が大学に推薦するというものでした。いわば学校のお墨付きの高校生なのですから、それなりに優秀な人物なのでしょうが、受験という過酷な競争の場に身を置かなかった要領のいい一群とみなされ、かつては一般入試をくぐりぬけてきた学生の白い目にさらされていました。

しかし、今では学校推薦型で大学に入学というのが半数を上回るといいますから、かつてのような偏見はなくなっています。中には90%以上が推薦入学といった大学もあるほどです。

総合型選抜のメリット

実は今注目を浴びている総合型選抜入試も推薦入試の一つなのです。総合型選抜入試は、大学側が求める「学生像」にあてはまる受験生を受け入れる入試制度です。いわゆる試験の成績よりも人物を重視して合否を決定する試験となっています。

この入試制度は私立大学では幅広く実施されていますし、国立大学でも多くが導入しています。概ね高校時代に生徒会長や部活動で部長を務めていた生徒、あるいは、課外活動でそれなりの経験や実績を残した生徒を対象とした入試です。筆記試験を一部課すケースもありますが基本的には筆記試験はなく、一次試験では面接、それを通過するとレポート提出や自己をアピールのプレゼンテーションなどが課せられます。生徒会や部活動に高校生活をかけた生徒にとっては救世主的な入試制度といえるでしょう。

総合型選抜入試は、学校推薦型で必要になる内申書といった高校の成績も問われません。受験生にとってこれ以上にない好条件が並ぶことから一般入試では学生が集まらない無名私立大学が実施するものとイメージしているならば、それは大きな勘違いです。多くの有名私立大学でも取り入れています。

つまり、総合型選抜入試はこれまで大学をめざせなかった高校生の進学を可能にし、また一般入試の実力よりワンランク、ツーランク上の大学をめざせるようになったのです。受験勉強が苦手ならば、生徒会や部活動に高校生活をかけてみるというのもある時代だということです。

人気の総合型選抜入試 「楽に入れそう」ではいけません

注意しなければならないのが、入学チャンスが安易に転がり込んでくるからでしょうか、入試課題が自分に合っているかばかりに目がいって大学や学部を問わないという姿勢です。

入学する学部では何を学ぶのか、そして将来、どういう仕事に就けるのかなどをしっかり調べ、自分の将来像に照らし合わせておく必要があります。そこに落差があると授業が面白くないということになります。
もともと学力不足は否めませんからモチベーションの低下は致命的で、落第、中退、退学という負のスパイラルに翻弄されることになりかねません。

とはいえ、大学の実態や学部も変貌を遂げ、聞きなれない大学や学部名が百花繚乱状態。昔の大学しか知らない保護者にとっては、今の大学がどうなっているのか想像もつかないというのが本音でしょう。ましてや、高校生にとっては、大学に入ったらどのような講義があり、どんな資格が取得でき、将来はどういった職種の会社に就職できるのかイメージできなくて当たり前でしょう。

そこで役立つのがオープンキャンパスです。夏休みや日曜日などの休日に大学が学校を開放しての学校説明会をするというものです。総合型選抜や学校推薦で受験する人だけでなく、受験生なら絶対に見逃せないイベントですし、保護者にとっても重要な情報が取得できる絶好のチャンスとなります。

オープンキャンパスは入試情報満載

オープンキャンパスでは大学の歴史、設備、各学部の社会的評価、就職状況をはじめ各学部の内容や入試についても詳しく説明してくれます。また、在校生が学部やキャンパスライフなどについて学生目線で紹介してくれる大学もあり、同世代の受験生にとってライブ感一杯のアドバイスが得られますし、保護者にとってもわが子のキャンパスライフが想像できると好評です。

とりわけ見逃せないのが入試案内パンフレットでは紹介されていない情報の公開です。たとえば総合型選抜入試では大学側はどんな学生が欲しいと考えているのかといった「学生像」や、入試で課せられる課題、レポートの書き方、そして選考基準などをこと細かく教えてくれる大学もあります。

オープンキャンパスに行くことで学校の立地環境や交通機関などもある程度知ることができますから地方から上京する受験生や家族にとっては、入学後のプランを立てるためのいい材料ともなります。

そういった意味で、オープンキャンパスはまさに情報の宝庫。できるだけ多くの大学を見てみたいものですが、交通費や宿泊費などを考えると効率のいい周り方を研究しなければなりません。各大学でオープンキャンパスのスケジュールを発表していますので、それをもとにスケジューリングしてみてください。

総合型選抜のデメリット

総合型選抜入試の最大の欠点は、受験勉強はおろか、高校卒業レベルの学力を持たない学生も大学に入学してしまうことです。大学の講義内容が理解できないという学生もいます。その結果、単位がとれずに進級や卒業ができずに中退するというケースが跡を絶たず、各大学でも大きな問題としてその対策に乗り出しています。

幸い総合型選抜入試は早いところでは夏休みには合否が決定します。それから入学までの半年を高校の復習時間とすれば、大学で学ぶだけの学力は得られるはずです。

最近では、総合型選抜入試で合格した学生に高校での勉強を復習する教材を送り、その提出をノルマとしたり、大学の講義についていくための知識を身につけるための特別講義を設ける大学もあるといいます。これをまじめにこなすことで学力問題はほとんど解決するといわれています。

大学での勉強はいい点数を取るだけのものではありません。自分の頭で考え、理解し、そして自分の考えとしてまとめていくという思考法を身につけられるというのも大学ならではのことでしょう。

ある意味では総合型選抜入学者は、そうした思考回路が高校生活で培われているという見方を大学側が判断しているからGMARCH(学習院、明治、青山、立教、中央、法政)クラスの総合型選抜入試では、評定平均も4.5以上と高いレベルが求められます。

ただし、高校のレベルによって求める評定平均が変わるというわけではないので、推薦枠が少なくなるとはいえ、平たくいうとレベルが低い高校からのエントリーが有利という側面も持ち備えています。

公募制と指定校制がある学校推薦型とは

一方の学校推薦型の公募制は、推薦入学を受け付けている大学を高校生自身が選び、学校長から推薦状をもらって受験するというものです。
こちらは評定平均よりも取得した資格や部活動、校外活動などでの実績が選考の対象となるスポーツ推薦なども公募推薦の一つに数えられますので、指定校制より条件が幅広く、実績の内容次第では上位大学への入学も十分にありうる入試制度です。

指定校制のメリット・デメリット

 指定校制は、高校と大学の信頼関係から成り立っている入試制度ですので、学校長から推薦されれば、ほぼ間違いなく合格となります。それだけに他の大学を受験することは許されません。条件となっている成績を表す評価平均は1、2年生の三学期分と3年生の一学期の成績から計算されます。つまり高校3年間、コンスタントに頑張ったかが問われることになります。

指定校制によって大学側は、確実に入学者を獲得できますし、高校としては大学進学率や合格率を高められるというメリットがあるので、受験生だけでなく高校、大学と三者にとって合理的な入試制度と根強い人気があります。

ただし、高校と大学の信頼関係で成り立っている入試制度ですから、入学後の素行に問題があったり、中退してしまうと、次年度からの推薦枠が縮小されたり、厳しいケースでは指定を取り消されたりする恐れもありますので、重い責任を担うということは意識しておく必要があります。

その一方で一人でも多くの学生を獲得しようと、数多くの高校に推薦枠を与える大学もあります。往々にして評定平均はそれほど高くなく、大学としてのレベルに問題ありとされている大学だったりしますから、うかつに話しに乗らない方がいいでしょう。

指定校制は、基本的に申し込んできた順に成績に合った大学に推薦しますが、定数以上の申込があれば、教師の裁量によるといい、エコヒイキがあるのも事実のようです。それを見越して、PTAや学校行事に積極的に参加し、学校側と親しくなり推薦を取り付けようと狙う保護者の存在も否定できません。

いずれにしても条件に従って推薦するわけですから、中には不本意な大学を推薦されることもあります。それを嫌って、一般入試に切り換えて受験するという生徒もいます。
しかし、高校としては、推薦入学を求める大学に一人でも多くの生徒を送り込み、大学の信頼を得て、次年度にさらに多くの推薦枠を得たいという思いや高校の体面上、進学率や合格率を上げようと推薦を薦めるケースもあります。

ただし、推薦されたのが不本意な大学だからといって、9月、10月になって一般入試に切り替えるには受験勉強に費やす時間が少なすぎる感があります。頑張ってみたものの、結局、推薦された大学よりランク下の大学に入学というケースも珍しくありません。そうならないためにも、早いうちからどの大学に推薦してもらういたいと教師に意思表示して、可能性を探っておくことも必要でしょう。

また、保護者も積極的に学校行事に参加して教師に接することも多くなり、受験の実態がよりよくわかったりするものです。保護者まで学校に関わらなければならないのかと重い気持ちにもなるでしょうが、それこそ一般入試からすれば受験生にとっても、保護者にとってもずっと楽な道なのですから、ひと頑張りしてみる価値は十分にあるでしょう。

 公募制のメリット・デメリット

  一方の公募推薦は、推薦枠を持っている大学を自由に受験できるというものです。学科試験を課すケースはほとんどなく、書類審査、面接、小論文などで選考されます。学業評価の他、部活動、課外活動、資格や特技なども選考の対象とするところが多く、自己推薦、スポーツ推薦、有資格者推薦、特定教科推薦、一芸推薦などがあります。こうしたことから、実績次第では上位大学も決して夢でなくなります。

公募制のデメリットは、合格が必ずしも約束されていないということです。あくまでも試験に合格しなければなりません。当然、人気大学は競争率もかなり高く、課題も難しくなっています。下位大学になるほど一人でも多くの学生を入学させたいという思いが働きますから合格率もかなり高くなります。こちらも合格したら、必ずその大学に入学しなければなりません。受験計画を立てるときに十分な注意してください。

公募制の場合、合格するまで何校でも受験できます。また、複数回受験できる大学もあるので合格のチャンスは広がります。志望する大学の受験科目をチェックするのはもちろん、自分の得意とする方法で入学選考している大学を探すところから始めましょう。

ここで意識しなければならないのが、合格したら必ず入学しなければならないということです。ですから第一希望、第二希望の順で受験するようにスケジューリングしなければなりません。大学の試験日程によっては、第二希望大学を最初に受験しなければならなくなります。そうなると話はややこしくなり、場合によっては第二希望の大学を断念せざるを得なくなります。スケジューリングは早目に着手して、障害はないかチェックしてください。

タイトルとURLをコピーしました